FRPタンクの強度について
FRPは軽量で耐薬品性や保温性に優れ、さらに、ポリエチレン等の他のプラスチックに比べて引張や曲げに強い『高強度』という特長を持ちます。
この記事ではFRP製タンクの強度についてご説明いたします。
FRPとは?
強度の前にFRPについて簡単にご説明します。
FRPとはFiber Reinforced Plastics(繊維強化プラスチック)の略称です。
《樹脂》+《繊維》の複合材で、軽量/保温性/耐蝕性といったプラスチックの特性を損なわないまま、繊維によって強度を向上させた素材です。
FRPの種類
FRPにも種類があり、使用する繊維によって名称が異なります。
- C-FRP:カーボン繊維
- G-FRP:ガラス繊維
- A-FRP:アラミド繊維 ※当社では使用しておりません
等が挙げられます。
一般的なFRPタンクにはガラス繊維が使用されているため、本ページにおけるFRPはG-FRPを指すものとします。
FRPと他の素材の強度の比較
一般に薬品貯蔵として使用されるタンク材質の例として、FRP・ステンレス(SUS304)・ポリエチレン等が挙げられます。
素材名 | 比重(g/cm3) | 引張強さ(MPa) | 比強度(kN*m/kg) |
---|---|---|---|
FRP(G-FRP) | 1.4~1.8 | 100~170 | 約70~110 |
SUS304 | 7.93 | 520 | 65 |
ポリエチレン | 0.94 | 21 | 22.3 |
比強度とは、重量に対しての強度を示すものであり、数値が高ければ高いほど軽くて丈夫な材質であることを示します。この表より、比強度が他のタンク材質に比べて優れていることがわかります。
FRPタンクはメーカーにより強度に違いがでてくるため注意が必要
また、ここで挙げたFRPの数値は規格値ではなく、参考値となります。
FRPの強度は、ステンレスやポリエチレン等のような単一材質と異なり規格値は設定されておりません。
これはFRPが複合材であり、その強度はガラス繊維の種類やその構成によって強度が決まるからです、
ガラス繊維の含有量が多ければ、強度は上がりますが、樹脂の含有量が少なくなるので、耐蝕性が下がります。その逆もあるため、各タンクメーカーが独自に調整をしております。
そのため、同じFRPという材質でも強度に違いがでてくることに留意し、FRPタンク導入時には強度の確認を行うことをお勧めします。
タンクの強度は厚みと形状で決定される
タンクとしての強度は、形状(構造)と厚みによって決定されます。
角型よりも円筒型の方が液圧に対して強く、強度が高い
タンクに作用する力で代表的なものに液圧がありますが、角型よりも円筒型の方が、液圧に対して強い構造をしております。
これは、四角形よりも円形の方が内圧(内容液によって内から外に押そうとする力)に対して、圧力が均等分散し変形しにくいためです。
基本的に円筒竪型タンクには補強枠が必要ありませんが、角型タンクには必要となります。
構造上液圧で局所的に荷重が作用し、補強枠なしでは液圧に耐えるほどの強度を持たせる場合、相当の厚みが必要となるからです。
同じ仕様であれば厚みがあるほど強度が増す
FRPタンクは基本的に、厚ければ厚いほど強度が増します。
そのため、仕様が同じであればより厚いタンクの方が高強度で、長持ちする傾向にあります。
FRPタンクの強度が低下する原因と対策
FRPタンクにおける板断面の構造は層状になっており、それぞれの層が強固に結びつくことで、材質として強度がでますが、液が層間に浸透した場合、樹脂の劣化によりその結びつきが弱くなり、強度が低下します。
そのため、長年使用したタンクは、外観に変化が無くても、液浸透により層間の接着が弱まり強度が低くなっている場合があります。
使用から10年以上経過したFRPタンクは劣化の可能性があるため、メーカーによる点検を実施することをお勧めいたします。
角型タンクの場合は、補強枠が健全であることが前提の強度設計であるため、仮に補強枠の腐蝕が進行した場合、液圧に耐えることが出来なくなり、タンクが破損する可能性があります。
補強枠が健全な状態であるかどうかの確認を日常点検でおこなっていただくことが重要となります。
当社ではFRPタンクの点検を行っておりますので、点検が必要な場合はぜひご相談ください。